溺愛予告~御曹司の告白躱します~

今日は朝から外回り。
出社してメールのチェックだけ済ませてから、爽くんの出身大学の事務局へ打ち合わせを兼ねた営業をしに行く予定だ。

学生寮の老朽化が進み、都内に四つあるうちの一つの寮の建て替えをうちで請け負うことになった。

建て替えの間の学生たちの住居ももちろん我が社と懇意にしている不動産会社と手を組んで手配済み。

他の寮は今のところ問題は起きていないとのことがだ、築年数は十年も変わらない。
なんとしても残り三つの寮も全てうちで建て替えを請け負いたい。

爽くんは出身大学というだけあって事務局の人にも顔見知りがいたり、ここの寮で生活していた友人もいたようで何かと営業をするのに役立つ情報をたくさん持っている。

一応私の案件の補佐という立場ではあるけど、残りの三つの建て替えを請け負えたとしたら、間違いなく爽くんの手柄だ。決して私ひとりの実力ではない。


若干ネガティブになりかけた思考を振り払うように頭を振って切り替える。
オフホワイトの大きな鞄に資料とタブレットを入れ、ちらりと爽くんを見ると既に営業車のキーを手にしていて準備が整ったようだった。

「よし、行きますか」
「ほっほーい」
「ふふ、全然似てない」
「モノマネなんて初めてしました。もうしません」
「あはは!王子はモノマネのレパートリーなんていらないもんね」
「莉子先輩はあるんですか?レパートリー」
「聞きたい?」
「ぜひ」
「いつかね」

拗ねた顔をする爽くんに笑いながら営業のフロアを出てエレベーターへ向かう。

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