溺愛予告~御曹司の告白躱します~
また涙が滲みそうになったのを堪えると、なぜか爽くんが私を凝視している気配がする。
「気持ちの伴ってない彼女がたくさんいたのと、長く付き合ってた彼女が1人いるのはどっちが嫌ですか?」
「…どっちも嫌だよ。ちょいちょい偏頭痛に悩まされるのも脳梗塞になるのも、どっちも嫌でしょ」
「とんでもないたとえ話ぶっこんできましたね」
「大量のコバエと毒蜘蛛みたいな虫に例えるよりマシでしょ」
「あははは!莉子先輩、面白すぎる…」
なんだか不本意だけど、笑ってくれるのならいいかとこちらも少しだけ微笑む。
風邪っぴきの後輩に口説かれるよりはだいぶマシだ。
「それでいうと、会社経営一族の御曹司は何に例えられるんですか?」
ちょっとした言葉遊びに食いつかれ、私もなんとなく考えてみる。
御曹司かぁ…。
私はあまり気にしないけど、その肩書のせいでモテてしまうんだから厄介なシロモノだと思う。
「常に付きまとう嫌なもの…。あ、生理痛?」
私がはじき出した答えに、爽くんは目を見開いて驚いている。
「…御曹司って、嫌なものなの?!」
「だって…面倒じゃない?付き合う相手がって例えだよね?」
どうしても水瀬の顔が浮かぶ。
彼はモテる。
ルックスとか、水瀬帝国の王子だということを差し引いてもモテると思う。