純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
(前の恋人、とか?)
突如浮かんだ可能性のせいで、胸のざわめきが大きくなってくる。これまで考えたこともなかったが、過去に恋人がいたとしてもまったく不思議ではない。むしろ、いないほうがおかしいだろう。
時雨の愛情は十分伝わっているので不安になるほどではないが、過去に彼が愛したであろう女性についてはだいぶ気になる。もしこのピンの贈り主がその女性だったとしたら、嫉妬で心が濁ってしまいそうだ。
とはいえ、妻の前で元恋人をほのめかすような発言をするだろうか。やはり違うかもしれないと、考えがあちこち移って定まらない。
真実を聞くに聞けず悶々としていると、時雨がなにかを思いついた様子で目線を向けてくる。
「睡もたまには洋服を着てみないか? 着物より着るのは楽だろうし、ひとつ持っておいても損はないぞ」
思いがけない言葉を投げかけられ、ネクタイピンの贈り主については一旦頭の隅に追いやり、代わりに洋服を着た自分の姿を想像する。
街でよく見かけるのは上下の服がつながったワンピースというもので、見ている分にはとても魅力的なのだが、体型にも服選びの感性にも自信がない睡には難易度が高い。