純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
女将が頼んだ通り、兼聡は手際よく髪を仕上げて去っていった。
化粧も施したし、うなじから背中まで見えるように開けた衿も、前結びにした豪華絢爛な刺繍が映える帯も完璧だ。支度を終えた睡蓮は、新造と共に客が待つ座敷へ向かう。
今日の客は、紡績会社を経営する九重という男性だと聞いた。肩書きにはさほど興味ないが、あの女将を唸らせた男前っぷりはどれほどのものかは気になる。
重い着物の長い裾を引いて座敷に到着すると、襖が開けられて中へ入る。上座に座って初めて、太鼓持ちや芸者に囲まれる男性と顔を合わせた。
──瞬間、周りの賑やかな音が消え、前方の彼に釘づけになる。
前髪を掻き上げた清潔感のある短髪、しっかりとした意思を持っていそうな凛々しい眉と瞳、高い鼻に整った薄めの唇。服装は、ベストを着込みネクタイを締めた、きっちりとしたスーツ姿。
これまで見たどの客とも一線を画す、隆とした男性がそこにいた。
女将が騒ぐのも納得だ。容姿はそこら辺の遊女よりも美しく、高貴な雰囲気を醸し出している。目を合わせるだけで体温が上昇しそうな、なんだか危ういものまで感じる。