純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「でも……俺はもう、あなたの髪を結いたくはありませんけどね」
暗い声となって、本音がこぼれた。睡蓮の顔からも笑みが消え、兼聡の真意を測る。
これまでの彼の態度からして、嫌われているわけではないはず。おそらく、花魁という非情な仕事をしていてほしくないという気遣いなのだろう。しかし、自分の意思で辞めることはできない。
睡蓮にとって、兼聡は唯一気を許せる男性であり、つらいことが多いこの狭い世界で心が癒される存在となっている。彼に髪を結ってもらうひとときは必要不可欠なのだ。仕事においても、精神衛生上においても。
「……わっちはまだ花魁になったばかりでありんす。寂しいこと言いなんすな」
今の状況を変えることはできないのだという意味も込めて、現在ではもう使わない廓言葉をあえて口にした。
茶化しつつ、睡蓮は憂いを帯びた笑みを浮かべるが、兼聡には口角を上げることができなかった。