純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

 すべての人が出払うと、入れ替わりで時雨が入ってきた。ずっと別の部屋で待たされていた彼は、正装した睡と対面した途端、幻でも見ているかのような顔でその場に立ち尽くす。

 汚れのない雪のような純白に、一点の紅が際立って、儚くも凛然とした美しさに目を奪われる。


「……また堕とされた」


 ぽつりとこぼれた言葉の意味を理解して、睡はぷっと噴き出した。


「本当ですか? 嬉しい」
「やっぱり式は中止にするべきか」
「えっ」
「綺麗すぎて誰にも見せたくない」


 突然彼の口から飛び出した発言にぎょっとするも、その理由はなんとも大袈裟なものだった。そんな冗談でも単純に嬉しくて、睡はくすくすと笑う。

 時雨は睡のそばに歩み寄り、穏やかさの中に真剣さが窺える表情で頬に手を伸ばす。


「君は出会ったときから心まで美しかった。芯が通っているのに純粋で、俺の感情を揺さぶるような子は初めてだった」


 身請けした当時の心情を明かされ、喜びが込み上げる。睡も、頬に触れる彼の手に自分のそれを重ねて応える。
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