純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「今は黒引き振袖が主流ですけど、九重さんがどうしても白無垢がいいって言うから、あなたの趣味なんだと思っていました」
「俺はなんでもいいんです。きっと睡はどれを着ても可愛いので」
時雨は茶化されても涼しげな顔を崩さずあっさり返すので、瑛一は「これは白無垢ひとつ選ぶのも大変そうだ」と楽しげに笑った。
時雨の溺愛ぶりを目の当たりにした四葉も無邪気な笑いをこぼし、兼聡はもはや呆れ気味だ。
そんなふたりは、照れっぱなしの睡に声をかける。
「着付けは私が手伝うからね」
「俺も、本番のために一度髪を結わせてください」
ふたりの厚意に睡の胸はじんと熱くなり、「ありがとう」と優しい笑みを返した。
数十分後、睡はひと目で気に入った花の刺繍があしらわれた白無垢に身を包み、久しぶりに髪を結ってもらって、完璧な花嫁の姿になっていた。
ついでに紅を差してくれた四葉が感極まって瞳を潤ませるものだから、睡もつられて泣きそうになった。今からこの調子では本番が心配だが。
瑛一いわく、花嫁の衣装選びには両親が来て、新郎は式当日でなければ花嫁姿を見られないことが多いらしい。
しかし、時雨が一緒にいる今日は『睡の花嫁姿は何度でも見たい』という彼ののろけた希望もあり、支度を終えたら披露することになった。