純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

「私の家だ。ここでひとまず詳しい話を聞こう」


 九重の手が背中側から腕に回され、睡の肩がびくりと跳ねる。構わず身体を支える大きな手からは、逞しさと思いのほか優しさを感じる。

 ひとまず無理やり哲夫のもとへ連れて行かれることはなさそうで、睡は胸を撫で下ろす。車を降りると、九重にしっかりと身体を支えられたまま、豪華な邸宅の中へ入った。


 焦げ茶色の木製のインテリアや床が重厚感を醸し出しており、格子状の窓やシャンデリア、ステンドグラスなどが見事な洋風建築だ。生まれてからずっと日本家屋にしか入った経験のない睡は、異世界に迷い込んだ気分になる。

 家の中にいたのは、女中らしき初老の女性がひとり。睡を見て最初は驚いた様子だったが、とても人のよさそうな笑顔と態度で迎えてくれた。

 九重は彼女に茶を用意するよう頼み、居間の南側にあるサンルームに睡を連れて行く。穏やかな陽が差し込むその空間には、小さなテーブルを挟んで肘かけのついた椅子が二対ある。

 向かい合って座り、茶が運ばれてひと息ついたところで、九重は睡の様子を窺いながら少しずつ幼少期の話を聞き出していった。
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