純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
扉が開くと、客室よりも少し広く、和洋折衷の気品ある雰囲気にいくらか生活感を感じる空間が広がる。
ふたりで寝てもまだ余裕がありそうなベッドに歩み寄った時雨は、布団をめくって中に入り端のほうに寄る。それを見た睡はぎょっとした。
「まさか、同じお布団で寝るのですか!?」
「生憎、来客用の寝具は綿を打ち直している最中なんでね」
ただ同じ部屋でひと晩過ごしてくれるだけだと思っていた睡は唖然とした。時雨は涼しげな表情を変えず、「早く来い。俺は明日も仕事だ」と言ってさっさと布団にもぐってしまう。
睡は鼓動が大きく乱れるのを感じながら、どうしようどうしようと頭を抱える。
昼間も言ったように、時雨は特別な男性であり、ひとつのベッドに横になるだけで緊張して逆に眠れなそうだ。
しかし彼を客だと思って接すれば、なんとか乗り切れるかもしれない。おゆかり様にするようにすり寄れば、自然に床へ入れるはず。
(そう、思い込むのよ。時雨さんはお客様、私は花魁、時雨さんはお客様……)
心の中で何度もそう唱え、ここは遊郭だと思考を切り替えた睡は、ひとつ深呼吸をしてベッドに腰かけた。