この恋が手遅れになる前に
「奏美さんに惚れたのはその時です」
「そんなに前から?」
「奏美さんがフラワーカーペットの花びらを小学生と散らして遊んだの覚えていますか?」
そういえば、あの年の小学6年生と花びらを撒いてフラワーシャワーを楽しんだり、花びらを集めてプールのように潜ったりして遊んだ。
「あの時の奏美さんは子供相手にも全力で、その笑顔が素敵だなって思いました」
そんなところを見られていたなんて知らなくて顔が赤くなる。
大量の花びらに囲まれるなんて、桜の花びらでも経験できるようなものじゃないだろう。子供たちが楽しそうで、私まで嬉しくなってはしゃいだ。
あの後政樹に子供と遊ぶな、仕事しろと怒られたっけ。
「舞う花びらが奏美さんに降った光景が本当に綺麗で、一目惚れってこういうことを言うんだって」
「恥ずかしい……」
これ以上聞かされると羞恥で泣きそうだ。
「すぐに政樹さんにあの人は誰かって聞きました。政樹さんの彼女だったら困りますから。同期だって教えてもらってからこの人と仕事がしたい、近くに居たいって思いました」
「だから教育係が私になったの?」
「はい。奏美さんから仕事を教わりたかったので。実は俺が会社に正社員で入社したのもほとんど政樹さんの力です。コネ入社ってやつなんですよ。やっぱ社長の息子の力はすごいですね」
ニコニコと笑う涼平くんに返す言葉がない。知らなかった。ここまで想われていたなんて。
「教育係は奏美さんにお願いしたいって言った時から政樹さんには俺の気持ちはバレてました。その時政樹さんから奏美さんは化粧で誤魔化してるけど中身は男だぞって聞いて、ドキドキしたんですけどすっぴんも綺麗で安心しました」