この恋が手遅れになる前に
「本田くんはいつもこんなところ彼女と来てるの?」
「え? 彼女いませんよ」
「いないの? 意外だね」
こんな完璧な子に彼女がいないなんて驚く。
「彼女がいたことがないんです」
本田くんの言葉に飲んでいたカクテルでむせた。
「けほっ……」
「大丈夫ですか?」
大丈夫なものか。イケメンで気が利くからさぞモテるだろうと思っていた後輩がすごい発言をしたのだから。
「1人も?」
「はい」
「冗談?」
「いえ、冗談ではなく女性と付き合ったことはありません」
真顔でそう返すから本当に彼女がいたことがないのかもしれない。最近の若者は草食系なんて言われているし。
「告白されたことはあるでしょ?」
「ありますが、お断りしています。好きな女性がいるので」
「本田くんから好きって言われたらその女性は嬉しいと思うけど言ってないの?」
「どうでしょう……」
真顔からほんの少し悲しそうな表情になる。
本田くんが気持ちを伝えれば両想いですぐに付き合うことができそうなのにもったいない。
「好きな女性には他に好きな人がいるので、僕の気持ちは届かないのではと思っています」
「そんなことないと思うけど」
私の言葉に本田くんは顔を上げた。
「気持ちだけでも伝えてみたら? 本田くんの気持ちを知ったら変わるかもしれないし」
こんなにカッコいいのに告白もしないなんて惜しい。本田くんに好かれる女性はきっと素敵な人なんだろう。
「そうでしょうか……」
本田くんは何かを迷うような顔になる。
数ヶ月そばで指導していてどんな性格かを理解しているつもりだった。けれどこんな本田くんは初めてでどう接していいか分からなくなった。