この恋が手遅れになる前に
気まずくてどんどんお酒が進む。本田くんはそんな私を見て今度は微笑んでいる。私よりもたくさん飲んでいるのに、本田くんは全然酔っていないようだ。
「本田くんはお酒強いの?」
「はい。いくら飲んでも酔わないんです。そう言う古川さんは顔が赤いですよ。もうお酒やめときましょうか」
ぼーっとして眠くなってきた。確かにもうソフトドリンクに切り替えた方がいいかもしれない。
「古川さんはどうなんですか?」
「ん?」
「恋愛です。彼氏とはどうなんですか?」
「あー……うん……」
思い浮かぶ顔は章吾さん。けれど彼にはもう奥さんがいる。
「私、本田くんに彼氏いるって言ったことあったっけ?」
「聞いてはいませんが、いるってことは知ってます」
本田くんに彼氏の話はしたことがないのに知っているということは私は分かりやすいのかもしれない。もし章吾さんと付き合っていたことを知っている社員が政樹以外にもいたら気まずいなと思った。私は振られたのだから。
私と別れたくないと言いながらも、最終的に政略結婚を受け入れたのは章吾さんだ。会社に身を置いている以上、社長には逆らえない。
不倫はごめんだからこれでよかった。けれどそう簡単に章吾さんへの気持ちは消えない。
新規事業の立ち上げメンバーに入れると言ってくれたのに。将来を一緒に考えていこうと言ってくれたのに。
別れるときに散々泣いたのにまた涙が出てきた。本田くんの前で泣きたくないけど目から勝手に溢れてくる。お酒を飲みすぎたせいに違いない。
「ごめっ……泣いたりして……」
慌てておしぼりを目に当てる。
「実は彼氏と別れたばっかで……」