この恋が手遅れになる前に
「ごめっ……ごめんなさい……」
やっと声が出せた。けれどその声は酷くかすれている。
「今夜もこれからも、俺の部屋には来ちゃだめです」
低い声にぎゅっと目を閉じる。
「言ったでしょ。奏美さんが俺のことを本当に好きになってくれるまで抱いてあげません」
私はどれだけこの子を傷つけるのだろう。
「俺マジで奏美さんが大事なんですよ。だからこれ以上あの人に心を乱されないでください。俺だけを好きでいて」
涼平くんがスッと立ち上がった。いきなりだから私の頭が涼平くんの肩で押された。
「涼平くん……?」
「待つのも辛いんですよ」
そう言って私をその場に置いて階段を上って行ってしまった。
「うぅっ……」
目から涙がこれでもかと溢れる。
涼平くんを怒らせてしまった。嫌われてしまったかもしれない。
全部見透かされていた。私の汚い心を。
涼平くんをいつまでも利用してちゃいけないってわかっていたのに、章吾さんへの気持ちを消しきれなかった。私を好きだと言ってくれた人を傷つけてしまった。
涼平くんは当たり前に私を受け入れてくれると思っていた。どうしてそんな都合のいいことを思っていたのだろう。
◇◇◇◇◇
会社以外で涼平くんと会話をすることがなくなった。食事に行くこともなければ電話も一切の連絡もない。会社で会ったとしても体を重ねる前のような先輩後輩の関係に戻ってしまった。
事務的な挨拶をして、仕事内容を共有して、指導して報告をされて会話は終わる。
お互いに笑顔までもぎこちない。これでは以前よりも雰囲気が悪いのではとさえ思う。
私の都合ばかりを押し付けていた結果がこれなのだから、涼平くんに許されるまで私はもう求めてはいけないのかもしれない。