この恋が手遅れになる前に



帰社してエレベーターから営業部のフロアに降りると奥の小会議室のドアが開いていることに気がついた。
打ち合わせの予定など聞いていなかったので近づくと中から声が聞こえる。

「こんなミスにどうして気づかなかったんだ?」

「申し訳ありません」

「も、申し訳ありません……」

政樹と……涼平くんと加藤さんかな。

険悪な雰囲気に小会議室の中に入れずにドアの外で足を止めた。

「涼平が見落としたことを気づくのがサブリーダーの君の仕事でもあるんだよ」

「はい……」

加藤さんの声は怯えている。きっとまた彼女が何かミスをしたのだろうか。

「お前もだ涼平、自分だけで判断して動こうとするな。今回はお前が100パーセント悪いよ」

「はい……申し訳ありません」

あれ? 今回怒られているのは涼平くんなの? 珍しい。

声音を聞く限り珍しく落ち込んでいるようだ。

「まだ時間はあるんだ。チームで情報はきちんと共有して動け」

「はい」

動く気配がしたから私は慌ててドアから離れて営業部のフロアに戻る。しばらくすると政樹がフロアに入って来た。

「政樹ちょっといい?」

思わず声をかけた。

「何?」

「今小会議室で何話してたの?」

「ああ、イベント準備でミスがあって」

「大きなミス?」

「いや、まだ間に合うからいいけど。奏美が気にすることじゃない」

政樹の言葉にムッとする。確かに私はイベントの中心にはいない。けれどまだ涼平くんの教育係なのだ。

「本田くんの仕事を把握しておかないといけないでしょ」

「そろそろ涼平を正式に俺の下に付けるから」

「え……」

「そう言ってただろ。元々俺が育てるために入社させたんだから」

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