この恋が手遅れになる前に
女性たちは勝ち誇ったような顔をして涼平くんに訴える。けれど涼平くんは表情を一切変えない。
「こちらの飾りの花はお配りしているものではございません。勝手に抜いて持ち帰られては困ります。もしもご希望でしたらお売りすることは可能です」
「お金を取るの?」
「はい、弊社の商品ですので」
涼平くんは私が言ったことを同じように女性たちに伝える。信じられないことに涼平くんは笑顔を見せた。すると女性たちは言葉を失った。恐らく自分の子供より若いであろうイケメンに笑顔を向けられて言い返すことができない。
背後で加藤さんが「ふん」と鼻で笑う。
「もしこれ以上ご納得いただけないようなら、警察に間に入っていただきましょう」
「え、警察……」
「購入してもいただけないようですし、商品のフラワータワーを勝手に変えられてしまいました。手にお持ちの花をご覧ください。強く握られて萎れています。損害を受けましたので、会社としては警察に相談するしかないと思っております」
涼平くんの言葉に女性たちは怯え始めた。お互いに目を見合わせて困惑している。
今更だ。最初に加藤さんに注意された段階でやめてくれればこちらも大きな問題にはしなかったかもしれないのに。
「もういいわよ……戻せばいいんでしょう?」
女性たちはタワーの吸水スポンジに花を戻そうとするけれど、うまく刺さらず地面に落ちた。
「あー、もう商品価値がなくなってしまいましたね。社長に報告して然るべき手続きをして損害を埋めないと。ご請求額の話をしましょうか」
言い放つ涼平くんは一見笑顔だけれど目が笑っていない。