この恋が手遅れになる前に
「向こうで花のつかみ取りをやってるんだから、これだっていいでしょう? 同じ花じゃない!」
女性の主張に唖然とする。確かにつかみ取りの企画もうちの会社だ。けれどタワーの花は持って帰られては困る。
「ではつかみ取りに参加されてください」
「もうあっちは終わってるのよ! 十分に用意しておかないそちらが悪いんでしょう?」
「ちょっと! 厚かましいです!」
背後の加藤さんが口を挟んだけれど私は手を上げて加藤さんを制した。これ以上この子が関わると話がややこしくなる。
「あなた方の言い分は勝手です。それに同じ花じゃないんですよ。色が似ていますが別の花です。それすらも理解していただけないような方にお渡しする花はありません」
「たかが花でしょう!」
「弊社の商品です。返していただけないようなら、こちらとしてもそれなりの対応をさせていただきます」
私の言葉に女性たちは顔を真っ赤にして「小娘が!」と怒鳴る。
「小娘なりに精いっぱい企画したイベントです。迷惑行為は困ります」
不覚にも私もどんどんヒートアップしていく。毎年毎年小さくても損害が出ている。もうやめさせなければ。
「失礼します」
割り込んできた声に顔を向けると加藤さんの横に涼平くんが立っている。
「え?」
どうして涼平くんが来たのだ。この場の対応をするには若すぎる。この女性たちを相手にするには舐められてはいけないのに。
「今年のイベント責任者の本田と申します。僕がお話を伺ってもよろしいですか?」
私の横に並んだ涼平くんは女性たちに向かい合った。
「この人たちが花を返せって言うのよ。まるで私たちが泥棒みたいな言い方をして。失礼じゃない?」