この恋が手遅れになる前に
私は二人の元へ駆けた。そうして勢いよく涼平くんの腕を掴んだ。驚いて振り返った涼平くんと目が合う。
「奏美さん?」
思わず掴んでしまったけれど、この行動をどう説明しようか迷う。
「涼平くん……行っちゃだめ……」
迷った末に涼平くんを引き留める。真っ赤な顔をしているだろう私に涼平くんは目を見開く。
「古川さん、邪魔しないでください!」
加藤さんは私を睨みつける。怒鳴られて涙が滲む。
私は邪魔なの? 涼平くんと加藤さんの雰囲気を邪魔してしまった?
涼平くんを奪われたくなくて無我夢中だった。
怒りと焦りでいっぱいだった気持ちが、涙が頬を伝って冷静になる。そうしてゆっくりと涼平くんの腕を放す。
浴衣の袖で涙を拭い、加藤さんを見据える。
「邪魔だって言われても、涼平くんは渡せない」
そう言った瞬間、私の腕が涼平くんに引っ張られる。
「え?」
腕を掴んだまま涼平くんは政樹の部屋の鍵を開けた。
「ちょっと涼平くん!?」
加藤さんが焦って涼平くんを呼ぶ。けれど何も言わず部屋のドアを開けて私を中に押し込んだ。
「涼平くん?」
私も戸惑って名前を呼んだ。
「ごめんね加藤さん、俺は酔ったふりする嘘つきに興味ないんだ。俺が大事なのは奏美さんだから」
そう言って加藤さんの目の前で部屋のドアをぴしゃりと閉めた。
天井の淡い光が私と涼平くんを照らす。
「酔ったふりする嘘つきに興味ないって……涼平くんがそれ言う?」
「奏美さんを手に入れるためなら俺はどこまでもズルくなりますから」
「…………」
「…………」
わずかな沈黙の後、先に行動したのは涼平くんだった。
抱き締められて唇を塞がれた。角度を変えて下唇を軽く噛まれる。