そして、僕がみえなくなったら
「もう少しで、伊月が透明人間になって50日になっちゃうね」


おおよそでしか数えられてないけれど、最初の違和感から今日で48日だ。



「どうしたらまた、みんなにも見えるようになるのかな」

「うーん。どうだろう……。みんなにはもう、ずっと見えないままかもね」



悲しそうなその声に、なんだか泣きたくなった。


それが実現してしまいそうな気が、心の奥底でしていたからかもしれない。



「実和も僕が見えなくなるのかな」

「ならないよ」

「実和も僕が見えなくなったら、僕は本当に透明になっちゃうね」



…………そんな悲しいこと言わないでよ。



「泣くなって、冗談だから」

「笑えない冗談、言わないでよっ」



零れ落ちる涙を、伊月の優しい指先が拭ってくれる。
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