呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
「分かった。ロッテには怖がらせてしまったことをきちんと詫びよう」
『ええ、お願いします。というか、私は最初から許しているので早くお立ちに――っ!?』
気づけばシンシアはイザークの腕に抱かれていた。次に優しく頭をぽんぽんと撫でられる。何がどうなったのか分からず、シンシアは目を白黒させた。
「大丈夫だ。ユフェが妖精猫であることは漏らすなとキーリとロッテ、それからカヴァスには伝えてある。宮殿では今までどおり、普通の猫であるように振る舞ってくれ」
秘密を打ち明けてくれたことが嬉しくて仕方がないのか、イザークは瞳を細めて屈託のない笑みを浮かべる。
やがて、渡したいものがあると言われてシンシアは一旦床に下ろされた。じっと眺めていると、イザークは懐から黒くて四角い箱を取り出した。
「悪いが後ろを向いて座ってくれないか?」
頼まれたシンシアは素直に身体を反対に向ける。と、首後ろでカチリという音がして少し重たいものが首に下がった。
下を向いても丁度見えない位置に何かがある。再び抱き上げられて姿見へ移動するとシンシアの首元には神々しく輝く宝石――森の宴があった。
「これは妖精猫であるユフェにこそ相応しい。首が苦しくないよう伸縮自在の特別なものを使っている。――やはり、若草色の瞳には森の宴が似合うな」
どこか満足げなイザークはやがて、シンシアの首後ろに口づけを落とした。