呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?


(まさか、相談者って……フォーレ家のフレイアお嬢様っ!?)

 フォーレ家はリアンを保護してくれた公爵家だ。
 そのお礼としてリアンはフォーレ家の子供たちに代々植物を操る魔法を教えている。

 フレイアにそれを教えたのは三年前。植物や虫が好きな女の子で花と一緒に野菜まで育てるという、教え子の中では少々変わった子だった。

 そしてフレイアの好きな相手といえばアルボス帝国の宰相、キーリ・マクリルただ一人。
 リアンは頭痛を覚えてこめかみに手を当てた。

「……青汁を持って行った彼の反応は?」
「残念ながらいまいちでした」

 それはそうだろう、と心の中でツッコんだ。

「それでわたくしは悟ったのです。青汁は良くなかったんだと。このままでは私の株が上がりません」

 世間知らずのお嬢様とはいえど、一応常識はありそうな考察だった。
 リアンは安堵の息を漏らした。これならこちらがアドバイスしてもなんとかなりそうだ。

「次は何をお作りに? お忙しい人なら疲れがとれるような癒やしの料理……」
「もっとインパクトのあるものが必要だと思いまして、今度星を見上げるパイを作っていこうと思います!」

 リアンは天井を仰いだ。
 駄目だ……きっとこの人は料理を選ぶセンスがない。

 星を見上げるパイはインパクトは充分にある。だが、あれを見て食欲がそそられるかと問われれば答えは否。不気味な見た目で食欲は失せる。

 リアンは溜め息を吐くときっぱりとそれはダメだと答えた。

< 211 / 219 >

この作品をシェア

pagetop