呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?


「いいですか、相手は多忙を極めるお人ですよね? それならば尚のことパイはいただけません。仕事をしながらパイを食べると欠片がパラパラと落ちる上に指にパイの脂分がついて紙にも移ってしまいます。そうなると、あなたの印象は最悪になりますよ」
「そ、そんな……ではどのようにすればわたくしは良いのでしょう?」
「手の汚れない食べ物を作ってください。例えばサンドウィッチはどうですか? それならあなたが作ったお野菜も挟めますし一石二鳥ではないでしょうか?」

 提案すると、フレイアがハッと息を呑むのが分かった。

「分かりました。では早速、サンドウィッチを作ってまいります! ありがとうございます!!」

 大きな音を立ててフレイアは椅子から立ち上がる。
 善は急げ、と息巻いて懺悔室を飛び出していった。部屋の向こうから乳母を呼ぶ彼女の声が微かに聞こえてくる。

「これで良かったのかしら……。あのお嬢様のことだからサンドウィッチを作っても変わった食材を挟みそうね」

 残されたリアンは肩を竦めると目を伏せた。

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