恋愛境界線

ため息を吐き出しながらベッドから抜け出した若宮課長に、そっと声を掛ける。


「あの、私と課長は、つまり昨日は何もなかった、ってことですよね……?」


「君に迷惑を掛けられたってこと以外は、ね」


ほら、きた。さっそくの嫌味パンチ。


「というか、その質問自体が図々しい。君相手に何かあるわけがないじゃないか」


「だって、同じベッドで寝てたんですから、万が一ってこともあるじゃないですか!それに、なんだか腰は痛いし……」


「腰が痛いのは、酔ってソファからひっくり返った際に腰を打ったからだろ」


左様ですか。


上司の前で一体どれだけの醜態を(さら)してしまったのかと思うと、もうさすがに言葉が出ない。


昨日に遡って、酔っ払う前の自分からお酒の入ったグラスを奪い取り、思いっきり床に叩きつけてやりたい……!


これ以上付き合いきれないとばかりに、黙って部屋を出ていった課長を見つめながら思う。


ところで、私の服はどこですか?



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