恋愛境界線

「──でも、顔で仕事が取れるほど、この仕事は甘いものじゃない。この仕事に限らず、だけど」


「っていうか、人にもよると思いますけど、どちらかといえば、女性相手の方がその辺はシビアですよね、きっと」


「確かにね。まぁ、深山君の場合は人当たりも良いから、そんな馬鹿なことを言うのは、実力のない極一部の人間だけだが」


「うん、本当に馬鹿だと思います。そんなことを言ったが最後、うちの女性陣全員を敵に回しちゃうのに」


頷きながら私が真面目にそう言った途端、課長は何が可笑しいのか口元を緩めた。


やっぱりアレか。好きな人のことを褒められると嬉しいっていう恋心か何かだろうか。


「……なんだか、もう、ホントご馳走様です」


「ご馳走様も何も、君はまだ何も食べていないじゃないか。生ハムにだって全然手を付けていないみたいだし」


そう言って若宮課長は、生ハムとチーズのサラダが載ったお皿を私の方へと勧めてきた。


「私が生ハムを好きだって言ったこと、覚えててくれたんですか……?」


「君が毎日、あの小さな化け物をハム、ハム、と呼んでいるのを耳にしていながら、どうやったらそのことを忘れられると言うんだ?」


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