恋愛境界線

あんなに愛くるしい生き物を化け物呼ばわりしたことは、今日のところは百、いや、一万歩譲って聞き流してあげよう。


私が生ハムを好きだって覚えててくれて、それを今日用意してくれたってことが嬉しい。


よくよくテーブルの上を見れば、デザイン案が通った今日に限って、何気におかずがいつもより豪華で。


課長は何も言わないけど、これってきっと、課長なりの(ねぎら)いのつもりなのかもしれない。


「課長、私は今初めて、若宮課長からの愛を感じてます……!」


「いや、愛はない」


「……あい。そうですね、すみません」


でも、なんだろう、それでも嬉しい。すごく。


「いただきますっ!あ、課長、シュウマイ食べますか?」


生ハムを箸で摘みながら、私の側にあったシュウマイの皿を課長の方へと寄せる。


「いや……、いい。グリーンピースは少し苦手なんだ」


……えっ、この人、食べ物の好き嫌いは許さない様な気難しそうな顔して、今ものすごく可愛いこと言わなかった?


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