恋愛境界線

これ以上話すことはないとの言葉通り、若宮課長は黙ってそのまま会議室を出て行った。


この業界に限ったことじゃないけど、発表したもの勝ちっていうのは判る。


うちの会社側が、この件を表沙汰にしたって何のメリットもないってことも判る。


判ってはいるけど――こんなの、全然納得がいかない。


あんなに頑張ったのに。


『よくやったな』って、初めて課長に褒めてもらえたのに。


今日、このデザインに決定する瞬間を、ずっと楽しみにしていたのに。


蓮井さんが考えて考えて、必死に生み出したデザインを、何の苦労もなくただ真似をしただけのデザインが視界に映る。


思い入れのある大切な物を土足で踏み荒らされたことに、目の前が真っ赤に染まって、やり場のない怒りに涙が込み上げてきた。


悔しい、悔しい、悔しい――どうしようもなく、悔しい。


「こんなのって、ない……っ」


今までに理不尽なことはあっても、ここまで悔しい思いをしたことなんてなかった。


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