恋愛境界線

今では、支倉さんと若宮課長の関係について、噂話をする人はいない。皆、あえて口にしないって感じだ。


仮に、誰かがふいに口にしたとしても、内容が内容なだけに、本人たちの前で口にすることはないと言えるはず。


だから、私が知っているという事実だけならまだしも、そのことを更に若宮課長が知っているという状態を説明するとするならば、私と若宮課長が直接そういう話をした――言い換えれば、そういう話をするほどの仲、ということで。


支倉さんは、そのことが引っ掛かっているってこと……?


だけど、私と課長の仲なんて、言葉にしてしまえば単なる上司と部下。


精々が、若宮課長のマンションに居候させてもらっている身の上、というだけのこと。


若宮課長が相手では、仮に休憩中だったとしても、職場でそんな話をするなんてことはまず考えられない。


だから、きっとどういう状況でそんな会話を交わしたのか、その辺も気になっているのかもしれない。


『仕事中に偶然二人きりになった時に会話に困って、他に話題も浮かばなくて、つい』とでも言えば、不自然じゃなくやり過ごせるかな……?


そんなことをグルグル考えていると、「本当にごめんなさい。そんなに気にしないで」と再び謝られた。


< 297 / 621 >

この作品をシェア

pagetop