恋愛境界線

「だから、朝起きたら目の前に若宮さんがいたとか、そういうドラマ的展開はなかったのか、ってこと!」


支倉さんは控えめに、三人は恐ろしいくらいに目を爛々(らんらん)と輝かせて、一言も聞き逃すまいと私にじっと視線を注いでくる。


何もなかったとはいえ――いや、多少のハプニングはあったけれども。


というか、どこかで覗いてたんじゃないかってくらい、寸分違わぬ、的確な予想だけれども。


ここで迂闊に『課長のマンションに一泊しちゃいました』なんて口にしたら、恐ろしいことになりそうだ。


「そ、そんなことあるわけないでしょう!?マンションにすら招待されなかったし!もっ、もう、ドラマの見過ぎだってば!」


上擦ってしまった声に、嘘がバレるんじゃないかとヒヤヒヤしたものの、白々しく笑い飛ばした私に、「そりゃそうだよね」「ドラマ的展開とか、そうあるわけないか」と、すぐに納得してくれた。


「……ってことはさ、やっぱり若宮さんってホモなのかな?」


ぶほっ!!!と、タイミング悪く口に含んでいたスープが、それこそドラマみたいに飛び散る。


「うわっ!何、急にどうした?」


スープを盛大に吹き出してしまった私に、同じテーブルの皆が汚いなぁと顔を顰めた。



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