恋愛境界線
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「あっ、若宮課長、お早うございます」


「課長、出張はどうでした?」


二泊三日の出張を終えて出社してきた若宮課長に、入り口の周囲に居た人たちがいち早く反応した。


その声で若宮課長の存在に気付いたけれど、何も言わずマンションを出た気まずさに、顔を上げることが出来ない。


デスクワークをこなす振りをして、PCを注視したり、手元の資料に忙しなく視線を落とす。


「何か美味しい物でも食べてきましたか?少しくらい、観光とかしました?」


「仕事で行ったんだ、そんな余裕はなかったよ。これ、お土産。休憩の時にでも皆でどうぞ」


「わぁ、有難うございますー。通りもんってベタですけど、好きです私」


「口に合いそうで良かった」と、女子社員との会話を終えた若宮課長は、今さっきまでの穏やかな声とは打って変わって、仕事モードの声色で私を呼んだ。


「芹沢君、話があるからちょっと来なさい」



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