恋愛境界線
まぁ、会話のない気まずさなんて、一刻も早くご飯を食べ終えて席を立てば済むだけのことだ。
そうは思うのだけど、課長が来た途端にガツガツと食べ出した挙句に席を立つというのは、余りにも判り易すぎて失礼な気もする。
逡巡した後、心の中でため息を吐き出し、仕方なく若宮課長に声を掛けた。
「……それ、美味しいですか?」
魚を食べていた課長の手が一瞬止まり、横目で私を一瞥。
「魚が食べたいなら、君もこれを頼めば良かったじゃないか」
……はい?
私は会話のキッカケとしてこの話題を振っただけで、別に魚が食べたくて訊いたわけじゃないんですけど。
『今日は良い天気ですねー』的な感じで、当たり障りのない話題を選んだだけなのに、『それが何か?』的な身も蓋もないデッドボールを返してくるなんて、会話のキャッチボール以前にルールを判ってない。
仕事面以外ではまるで会話が成り立たないこの人のコミュニケーション能力が、本気で心配になってくる。