恋愛境界線

適切じゃないなんて、深山さんは一体何を言いかけていたのだろう?


それも気になったけれど、いま私の頭を占めているのは『よりを戻した』という言葉の方で。


「……あのっ、よりを戻したって、それって」


詳しく訊こうとした私を遮って、横から突然二人の女性社員が現れた。


「あの、この席空いてるんでしたら、ご一緒しても良いですか?」


手にトレイを持った女性社員二人は、深山さんを見つめたまま、若宮課長が座っていた席と私の隣を指した。


「えぇ、どうぞ。僕はもう食べ終えたので」


にこやかにそう言って立ち上がり、深山さんは自分の座っていた席を勧める。


その態度に二人はお礼を言いながらも、明らかに当てが外れたと言わんばかりの表情で、残念そうにお互いに顔を見合わせていた。


そんな二人の様子を知ることもなく、「それじゃあ、芹沢さん、お先に」と去って行く深山さんを、まさか呼び止めるわけにもいかなくて。


結局、気になったことは訊けず終いとなってしまった。


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