恋愛境界線
「ところで、その荷物は?……もしかして、手料理でもご馳走してくれるとか?」
右手に持っていた買い物袋を渚に目敏く気付かれてしまい、『ご飯を作ってあげる!』と言って驚かせようとした私の思惑は、見事失敗に終わってしまった。
「もう!せっかくビックリさせようと思ったのに、何で先に言うかなぁ」
わざと不貞腐れた表情を作り、渚を恨みがましく睨む。
「マジで?半分冗談のつもりで言ったんだけど。珍しいな」
渚ならもっと手放しで、大袈裟だと思うくらいに喜んでくれると思っていたのに、僅かに驚いただけのその反応に物足りなさを感じてしまう。
仮にもお礼と称して手料理を振る舞おうというのに、そんな風に感じるのも身勝手な話ではあるけれど。
「じゃあ、今から作るから、渚は出来上がるまでテレビでも観てて!」
置かせてもらっている私の荷物の中からエプロンを取り出すと、腕まくりをしてキッチンへと向かった。