恋愛境界線
心から思ったことを伝えた私に、課長が「単純だな、君は」と笑う。
「それにしても、まだ本調子じゃないからか、調子が狂った。どうやら語りすぎた様だ」
照れ隠しなのか、本当に体調が優れないからなのか、課長は珍しくふわりとあくびをして、ソファの背もたれ部分に背中を預けた。
「課長、眠いんですか?」
「少し前に風邪薬を飲んだせいだ。薬は滅多に飲まないんだが、飲むと体質的に眠気が酷くて」
「薬を飲んだのに、こうして起きてたら意味ないじゃないですか!」
自分のことには妙なところで無頓着な課長の手を取って、ソファから立ち上がらせた。
そして、そのまま寝室へと移動させる。
「というか、こんな時間に来た私のせいですよね。すみません」
「本当だよ」と減らず口を叩く課長は、相当眠いのかまたあくびを洩らした。