恋愛境界線
「私はもう帰るので、課長はゆっくり寝て下さい」
課長がちゃんとベッドに横になったのを見届け、そっとドアノブに手を掛ける。
「酔ってるくせに、それじゃあ帰れないだろう」
「大丈夫ですよ、もう醒めましたから。課長こそ、やっぱりまだ本調子じゃないですよね?」
「土日で完全に治すから心配ない」
そう答える課長の瞼は閉じていて、あといくらと経たない内に寝息が聞こえてきそうだ。
「あとは私に任せて、課長はゆっくり休んでください」
静かに退室しドアを閉める直前、もう一度課長の方を見る。
室内は暗くて、課長の顔ははっきりとは見えないけれど。
「課長、……色々と有難うございました」
それと、大好きでした。
一番伝えたい言葉は胸の奥にしまって、そっと部屋を出た。