恋愛境界線
奥田さんは、「オッケーオッケー」と馴々しく私の肩に手を回してきた。
触れられた場所から悪寒が走り、振り解こうとしたその時、騒々しい足音が聞こえてきた。
「芹沢君っ……!」
「若宮課長!?」
どうして、ここに!?と訊こうとしたけれど、その前に強く腕を引かれ、奥田さんから引き離された。
よほど急いで来たのか、いつもならば休日出勤の時でもスーツ姿の若宮課長が、今日は下はテーパードパンツ、上はVネックのTシャツにベージュジャケットというカジュアルな格好をしている。
どうして課長がこんなところ居るのか判らずにいると、少し遅れて支倉さんも息を切らせながら現れた。
「芹沢さん、大丈夫?何もされてないわよね?」
「お二人共、どうして……」
「それはこっちのセリフ。どうして、私にまで黙って一人で動いたの?動く時は二人で、って約束だったじゃない」
その言葉には謝る他ないけれど、実を言えば最初からこうしようと思っていたことだった。