恋愛境界線
確かに、自ら関係性を口外しなければ、名字の違う二人が叔父と甥の関係にあることに気付ける人は少ないと思う。
かくいう私も、渚に奥田さんのことを教えてもらうまでは全然知らなかった。
「だけど、これだけは言っておく。叔父さんに頼ったことは一度もない。コネだなんだって言われるのが嫌で、社内の誰にも叔父さんのことは話さなかったし。“芹沢”さんなら判るでしょ、俺のこの気持ち」
こっちのカードは、既に何枚か見せた。
それだけで、もう自分が不利であることを自覚しているはずなのに、奥田さんはどこまでも飄々とした態度を崩さない。
「……私を下の名前で呼び始めたのは、親しくなって上手く利用しようとでも考えたからですか?」
今になって再び名字で呼んでくる奥田さんを、じっと見つめる。
「その辺については、場所を変えて話さない?芹沢さんとは、前々から二人でゆっくり話してみたいと思ってたんだ」
課長もポーカーフェイスが上手いけれど、この人も何を考えているのか全然読めない。
「……どうしてこんなことをしたのか。三年前のことと今回のことを、きちんと話してくれる気が奥田さんにあるのなら」