恋愛境界線
茫然としている間にも、電車のドアは目の前で閉じられてしまった。
電車の走り出す音と加速する音が聞こえる頃になって、やっと私は声を発することが出来た。
「ちょっ……、電車行っちゃったじゃないですか!」
「最終じゃあるまいし、またすぐに次の電車が来るだろう」
そう言って、若宮課長が掴んでいた私の腕を静かに放した。
「そりゃあ、そうですけど……。どうかしたんですか?急に」
「君は、言いたいことはないと言ったけれど、君を見ていたら、どうしても言っておきたいことがあって」
「はぁ……。えっと、何でしょう?」
「私は、社内恋愛をしない主義なんだ」
突然切り出された一言に、どう返せば良いのか戸惑う。
それは以前にも課長の口から何度か聞いたことのある言葉だ。
だけど、どうしてそれをわざわざ今の私に言うのかが判らない。