恋愛境界線
「まぁ、課長がネズミを苦手っていうのなら、百歩譲ってハムスターと思ってもらっても構いませんけど」
「いくら私がコイツをハムスターと思おうが、結局はネズミじゃないか」
「それはそうですけど、少しはそれで自分を誤魔化せるんじゃないかと」
「誤魔化せるか!ハムスターだろうがネズミだろうが関係ない。私は、齧歯類は生理的に受け付けないんだ!」
間違ってもその部屋、いや、ケージからは出さないように!出したら、そいつは即刻ベランダから放り出す。
──そんな、動物虐待とも取れるセリフを、私とハムに向かって容赦なく突きつけた。
「別に、ハムは咬みついたりする訳じゃないのにねぇ」
判っているのか判っていないのか、ハムはキョトンとした愛くるしい表情で私を見上げてくる。この可愛さが判らないなんて!
それにしても、さっきの若宮課長の顔。
会社では絶対に拝むことの出来ない、驚いた顔。焦った声。
かなりレアな課長のあの取り乱し様を思い出したら、自然と口元に笑いが込み上げた。