恋愛境界線
驚いて私から数歩退いた課長同様にハムも驚いたのか、私の手の中で突然暴れ始めた。
びっくりさせてごめんね、と言って人差し指で撫でてあげた後、そっとケージの中に戻す。
「小動物で《ハム》なんて名前、誰だってハムスターだと思うだろう!」と、若宮課長は尚も声を荒げる。
「ハムが好きなので、ハムって名前をつけたんです!」
「ハムが好き?そいつが?」
「いえ、私が。ハムはハムでも好きなのは、生ハムなんですけどね」
「馬鹿野郎。そんな情報はどうでもいいし、ネズミにそんな紛らわしい名前を付けるんじゃない!」
「そんなこと言いますけど、猫にポチって付ける人だって、犬にクマとかタマとか付ける人だっているじゃないですかー」
ぶぅぶぅと口を尖らせて反論すると、またしても「煩い」の一言。
「うちのハムだって、つぶらな瞳でハムスターに劣らず可愛くないですか?」
というか、ハムスターなら可愛くて、ネズミというと嫌な顔をされることが多々あるけれど、うちのハムの場合は特に、ハムスターとの見た目の違いなんて、毛と尻尾の長さくらいだと思う。