恋愛境界線
「──判りました。これは、私の方からlotusデザイン事務所へ返却しておきます」
一礼し、自分の席に戻ろうとすると、浅見先輩が背後からデザイン画を覗き込んできた。
「私、実はlotusのデザインってどれも好きなのよねー」と言いながら、デザイン画の隅々まで目を通して行く。
「しかも、蓮井さん自ら手掛けるって聞いてたから、密かに期待してたのだけれど……」
らしくないくらいに普通というか、無難なセンを狙ってきたって感じね、と肩を竦めた。
「こういう物は余り奇を衒い過ぎてても困るが、これでは無難過ぎる」
素っ気なくそう言ってPCに向かい始めた若宮課長の姿に、私と先輩も自分の仕事へと戻る。
それにしても、没になったことをどう伝えれば良いんだろう。
返却しておきますとは言ったものの、こういう役目は初めてで気が重くなってきた。
これが逆で、採用になりましたと伝える方だったら良かったのに……。
若宮課長だったら、こういうことをどう伝えるんだろう?と、考えてみたけれど、「これじゃあ、全く使い物になりません」と、ばっさり切り捨てる姿しか想像出来なかった。