期間限定恋人ごっこ【完】番外編
13時過ぎ、ユカと屋上でお昼を食べていると突如誰かの手によって音をたてて開かれたドアの向こうから現れたのは北条誠人だった。
『何しに来たの』
自分でも驚くほど低く冷たい声が出て、ユカが一瞬ビクついた。
彼は微動だにしなかったけど。
私の問いに彼は「今日は一緒に帰れない」と言ってドアを閉めて行ってしまった。
なんなの…そう言いたいはずがショックなのか何なのか分からないけど言葉が出なかった。
出てきてくれなかった。
私の代わりにユカがペラペラと話していたけど右から入っては左へと抜けて行って内容なんて頭の中に入っちゃいなかった。
キーンコーンと学校中に鳴り響いた鐘は彼が言っていた放課後を知らせる鐘で、鳴ったと同時に鞄を片手に教室を出た。
昇降口に行くと当然彼の姿はなくて、そこも通りすぎるとさっさと正門をくぐって校外へと出た。
今日は近道の繁華街を抜けて帰ろう。
そうと決めた私は足を繁華街の方向へと進めていった。
日は沈んでないのにザワザワと人の声や足音、物音で騒がしく、さすが繁華街と言ったところだ。
夜は夜でまた雰囲気がガラリと変わり、色んな大人やガラの悪い人間で溢れ返ってる。
そんな場所を通り抜けると一気に景色が変わって、何か物足りなさを感じてしまう。
物足りなさを感じつつ前へ進んでいくといつも利用しているバス停に着き、タイミングよく来たバスに乗り込むと切符を取ってキョロリと席を探し、空いていた席に腰を下ろすと青と白と鳥しかない空を窓から眺めた。
次のバス停のアナウンスが入り、そこでバスは止まると2人の女子高生が入ってきた。
いつもなら特別気にすることなんてしない…だけど彼女たちが気になってしまうような話をしていたから。