期間限定恋人ごっこ【完】番外編
SHRが終わるのが少しばかり遅いため早く帰りたいと思っているとマナーモードにしているケータイがヴヴヴと震えた。
これはラインか…誰だろ。
ラインの送り主が気になり机の下に隠して弄って見てみれば____私は目を見開いた。
▹俺だ、千也。
遅い。迎えに来てるから早く出て来い。
んなッ!!なんだとコイツ!
何で頼んでもないのに迎えに来てるのかと脳内は混乱状態だ。
小声でユカを呼べば何?と振り返ったユカにヤバいと言えば何がやばいのか分からないと当然のような答えが返ってきた。
『千也が来てる…』
まさかの事態を伝えればユカは私とは正反対に「え!?どこどこ!」と目を輝かせた。
あぁダメだこの子。
面食いのユカがテンション上がらないはずもなく、“あそこ”と正門に止められた車を指差せばユカは車の傍で一服して私を待っている男に目を移した。
…千也ってタバコ吸うんだ。
「…え」
『ユカ?どうした?』
千也をその瞳に映して動きを止めたユカはグリンといきなり私に顔を向けると、「聞いてない」とボソリと呟いた、かと思ったら大声ではないもののすごい剣幕で「聞いてない!」と二度同じ言葉を口にした。
『何が?』
「あの人、稲美大学のミスターの福澤千也さんじゃん!」
『え?何、アイツ有名なの?』
「これだから北条にしか目がいかないアンタは…」
何で沙夜ばっかにイケメンが寄ってくるのよ、とブツブツ言うユカは放っておくとして今アイツをどうにかしないといけない。
“迎えた頼んでないけど?”
と返信すれば“俺が勝手に迎えに行きたいと思ったんだからいいだろ”と帰ってくる始末。
いや、本当勝手すぎるでしょ。
ちょっとどこまで俺様なのよ。
誠人と会えばヤバいよね…火花散りそう。
『先生すみません、家の事情で今日はもう帰りますね』
普通ならこんな我儘通じるはずはないのだけど、先生が私にとる態度は普通じゃないから。
「あぁ、帰っていいぞ」