期間限定恋人ごっこ【完】番外編


考えた結果あんなものを消すのは面倒なのでそのまま花が置かれた席へと向かい、花瓶を真後ろにあるロッカーの上に置くと何もなかったかのように席に着いた。



私が想像以上に傷ついてないのを見たクラスメートはグループを作りヒソヒソと話し出した。



私にこんなものは通用しない。

こんなもので傷つきはしない。



これ以上のことをしないと私を傷つけることなんてできないよ。



それに花だってさ、相楽沙夜は死んだって意味で菊の花を置いたんだろうけど、私の好きな花って菊の花だし…聞くもこんなふうに扱われて可哀想だと思う。


まぁクラスメートはそんなこと知りはしないし、残念無念また来週ってね。


菊の次はユリの花だったりして。

そんなことを考えていたら誰かが廊下を走っているらしく、激しい足音が響いている。


その音はだんだんと大きくなってきて、もしかして…とあの人物を思い浮かべた。




「沙夜ッ!!」




私の名前を呼んで勢いよく入ってきた彼女は黒板を見るなり怒りを瞳に宿した。


わなわなと怒りが込み上げているのが分かる。




「誰だ!んなことした奴はッ。名乗り出ろ!!」

『ユカ』

「出てこいよッ」




私が名前を呼んでも止まってはくれないユカの肩に手を置いて名前をもう一度呼ぶと止まってくれた、けど辛そうな顔で私を見た。


そんな顔、しなくていいよ…して欲しくない。



『こんな幼稚なもの、騒ぐほどのものでもないよ』



私の言葉に数人の女子が顔を歪めるのを私は見逃さなかった。

犯人はあの人たちか。


ユカを宥めて席に着くと鐘が鳴り、先生が入ってきた。



先生は一瞬ギョッとしていたけどやはり見て見ぬフリ、何事もなかったかのようにその文字を消していった。



席に着いた私はそれを眺める。

まぁ、こんなもんだよね。


分かってはいたけどやっぱり何もなかったかのようにされると悲しさや怒りが込み上げてくる。



これで私が死んだりでもしたらどうするつもりなんだろうか。



ニュースで゛私たちはそのようなことはなかったと聞いております。゛なんて隠蔽するんだろうか。



この学校の大人たちは屑だ。


汚い言葉を心で吐き、もう授業を受ける気なんて起こらないので机に突っ伏して睡眠学習をすることにした。



鐘が鳴ったことによって覚まされた意識、私は眠りすぎて重くなってしまった頭を押さえながら起きあがると、前の席のユカがこちらに顔を向けていて「お昼行こう」と真剣な顔で言ってきたため何かあるなと悟った。


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