姉のカレシの、闇に溺れて
家の前に止めていた自転車を引き、『じゃあね』と南瀬くんは歩き出した。
あっ!!
「南瀬くん、これ、ジャケット……」
「ああ、うん。また明日、学校で」
南瀬くんが羽織ってくれたジャケットを抱きかかえ、頷くと、南瀬くんは私が大好きな笑顔で微笑んで、大きく手を振ってくれた。
手を振り返し、南瀬くんが見えなくなるまで見送る。
「……………あんな良いヤツ、フるなんて紗和はどうかしてるよ」
見送る横で、悠一さんがボソッと呟いた。
『本当だね』と言いつつも、それでも悠一さんといたいという事に嘘はつけなかった。
「………紗和、今までごめん、本当に……ごめん。俺を選んでくれて……ありがとう」
私を見て目に涙を溜める悠一さん。同時に私の涙も溢れる。
「うん……」
差し出された手を強く、握りしめる。