姉のカレシの、闇に溺れて


 家の前に止めていた自転車を引き、『じゃあね』と南瀬くんは歩き出した。



 あっ!!



「南瀬くん、これ、ジャケット……」


「ああ、うん。また明日、学校で」



 南瀬くんが羽織ってくれたジャケットを抱きかかえ、頷くと、南瀬くんは私が大好きな笑顔で微笑んで、大きく手を振ってくれた。



 手を振り返し、南瀬くんが見えなくなるまで見送る。


「……………あんな良いヤツ、フるなんて紗和はどうかしてるよ」


 見送る横で、悠一さんがボソッと呟いた。
 『本当だね』と言いつつも、それでも悠一さんといたいという事に嘘はつけなかった。



「………紗和、今までごめん、本当に……ごめん。俺を選んでくれて……ありがとう」



 私を見て目に涙を溜める悠一さん。同時に私の涙も溢れる。



「うん……」



 差し出された手を強く、握りしめる。


< 258 / 271 >

この作品をシェア

pagetop