廓の華
その時、久遠さまは懐から小さな箱を取り出した。にこりとしたまま差し出され、目を見開く。
不意打ちの贈り物に胸が鳴った。そして箱を開けた瞬間、呼吸すら忘れるほどの衝撃が体に走る。
綺麗な布に包まれていたのは、繊細な装飾が施された飾り櫛だった。職人がひとつずつ手作りをしている櫛は箱の中で艶々と輝いて見える。
宝石のような貝殻が埋め込まれていて、その美しさに目を奪われた。
「気に入ったか? 京の都でいい店があって、すぐに牡丹の顔が浮かんだんだ。君に渡したかった」
想像以上の贈り物に胸がいっぱいになる。
櫛は、苦死を連想させるため贈り物には不向きだと言われていたが、結婚生活の苦労と重ねて〝死ぬまで共に寄り添いながら生きていこう〟という婚姻の申し込みの意味として渡す習慣がある。
彼は、その意味をわかっているの?
「どうして、私にこれを贈ってくださったのですか?」
「どうしてだと思う?」
「い、意地悪。この質問にも答えてくださらないんですね」
思わず、むぅとふくれると、目の前で笑顔が弾けた。肩を揺らして笑う姿は無邪気な子どもみたいで、涼しげな雰囲気とは違った面を見れてドキドキする。
どうしたって、私は久遠さまに心を奪われてしまうのだ。
彼のどんな一面も好きだし、なにひとつ教えてくれなくても、一緒にいられればそれでいいとさえ思えてくる。