廓の華
まさか、期待外れだった?
緊張感で心臓が鈍く音を立てたとき、澄んだ黒い瞳が私をとらえる。
「君は、俺と似ている」
「似ている?」
「君はこの場所に囚われているだろう? 俺も、今生きている世界からは逃れられないから」
私には難しくて、その意味を察することができなかった。だが、目の前の男が私と同じように決められた人生を歩んでいる人だというのは伝わる。
その時、初めてわずかに熱のこもった視線を向けられた。目が逸らせない。
「それでも、牡丹はまっすぐで澄んだ瞳をしている。見惚れたよ。他の遊女は目に入らないほどにね」
とても不思議な男だった。
お客なのに、金平糖のような口説き文句を言う。
甘い雰囲気はすぐに消え、お互い深く踏み込まない会話をして、酔いが回ってきた頃に褥に入った。ただ、ふたりの体は重ならず、朝日とともに隣の温もりは去る。
「牡丹。また会いに来る」
遊郭の客であるはずの彼は、一度も私に触れなかった。