廓の華

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「ふぅん。それから、その男が宣言通り常連になったってわけか」


 熱いお茶をすすりながら、興味を引かれたように目を細めるのは、町医者の(はなだ)さんである。

 縹さんは、遊女の流行り病を診察したり、看取ったりする役としてかすみやにも出入りするようになり、五年ほど前から会うたびに軽く近況を語り合うほどの仲となった。

 男気あふれた人情派で、根っからの江戸っ子気質な彼は、遊女たちからも親しまれている。

 客もまばらである昼間、仕事がてら店先へ現れた彼に最近出会った奇妙な客の話をすると、縹さんは腕を組みながら口を開いた。


「この花街でも名の知れた花魁である牡丹を指名して、ただお喋りだけして帰るなんて信じられねぇな。本当にそいつは男かい」

「紛れもない男性だよ。名前しか知らないけどね」

「金持ちの気が知れねぇや。牡丹を呼ぶだけでも庶民の男にとっちゃあ贅沢なのによ」


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