廓の華
「すぐに会いに来られなくてすまない」
「久遠さまはなにも悪くありません。私こそ、なんて謝ったらいいのか」
男らしい大きな手が頭を撫でてくれた。精一杯手加減をして触れる仕草に、胸が愛しさでいっぱいになる。
この手を待っていたの。心が温かくなる不思議な指。心地よくて、ずっと撫でていて欲しくなる。
彼は、文の一件で、自分の働いていた屋敷の主人が私の馴染み客だと知ったはずだ。他の客を取らない様子から、身請けが決まったことも察しているに違いない。
「泣いていたのか」
耳元で気づかう声が聞こえた。
泣き顔を隠したつもりだったのに、彼は聡い。肩越しに机の上の文も見られてしまい、きっと泣いた理由も理解している。
「いつ、この店を出るんだ?」
「明日です」
ふたりきりの部屋が静寂に包まれた。
大旦那の下で働いていたのなら、その性格は理解しているだろう。妻がありながら、気に入っている遊女をとられそうになった嫉妬で久遠さまを解雇する傲慢さと、執着心は狂気じみている。
触られた感触を思い出すだけで身の毛がよだつ。