王女ちゃんの執事1『で・eye』加藤さん、きれいです。
「いや。おれは、うそでもかまわないんだけどな、町田」
 頭、打ったんだもんな。
 うん。じっとしとけ。
 救急車を呼んで、おれは去る。
 善意の第三者。

 スマホは運の悪いことに、パンツの右ポケット。
 町田に右腕を捕獲されて床にはいつくばっている状態じゃ、ブラジル=地球の裏側ほど遠い場所に必死で左手を伸ばすと、気づいた町田がうめきながら半身を持ち上げた。
「大丈夫です。おおげさにしないで…ください。前とか鼻からいっちゃって――。骨、折れたこともある…し」
「…………」
 町田は絶句したおれに『すみません』とまた言って、パンツのポケットから出したハンカチを額に当てた。
「血とか出たほうが、頭はあぶなくないんで――」
 そんなこと、なんで知ってる? ってか聞いてねえし。
 おまえ絶対、おれと住んでる世界が違う。
 異文化交流はヨソでしろ。
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