王女ちゃんの執事1『で・eye』加藤さん、きれいです。
 はあ~っと、ため息をついて。
 シャツの胸ポケットに手を伸ばしかけたら、いつの間にか町田が真っ正面にいた。
 空間移動もすんのか、おまえ。
 も、いい。も、疲れた。
 なんでもありだ。
 ただし、おれ抜きで。
 おれは帰る。
「加藤さん」
 はい。
「五十嵐、死にます」

 は、いいいい?

「理由はわかんないけど、あいつ、ダメです! ダメ色なんです!」
「…………」
「おれ、知ってるやつは……いやです! 助けてやってください! 五十嵐助けてやってくださいっ」
「…………」

 どうして、ここでおれを見るのよ? 
 おまえの大好きな王女さまは、今、どこなのよ。
 なんでもありだって言っても、おれにだってキャパシティーってやつがあるのよ。
 そんなわけで町田――。
「そういうのは、な。王女さんに頼め」
 胸ポケットのイヤホンを探りながら、おれがドアのノブに手をかけると。
「だから!」
 凡人のおれには計り知れないポテンシャルを持つ町田は、おれが重たいドアを10センチも開けられないうちに、おれの肩をにぎりつぶしてくれていた。
「ぐあああ」「こんなに頼んでるんです」


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