吐息



黒いコートに身を包む彼は、ポケットに手を突っ込んだまま微笑みかける。

胸が締めつけられるような優しい笑み。

けど、その目の奥には、どこか闇を抱えているように感じられる。

「お疲れ様。延長なかったから、3万だったよね。売上、ちょうだい」

「はい……」

私はお客から貰ったお金を渡した。

彼は慣れた手つきでお札を弾いていく。

と、何かに気づいたように私を見た。

「ん、一枚多いけど」

「それ……チップです。チップも、隠さずに渡すように言われているから」

「あー、そう。ふーん、真咲さんから、そう言われてるんだ」

「はい」


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